No.43:2016年以降はNOx規制80%減の日本案承認 国交省がIMO・MEPCの審議結果を公表 舶用機器メーカーの対応急ピッチで進む

平成20年4月16日(水)Vol.43

2016年以降はNOx規制80%減の日本案承認

国交省がIMO・MEPCの審議結果を公表

舶用機器メーカーの対応急ピッチで進む

 
国土交通省はこのほど、去る3月31日~4月4日までロンドンで開催されたIMO(国際海事機関)の第57回海洋環境保護委員会(MEPC)での「船舶による環境汚染の規制」についての審議の詳細を公表した。

同委員会では大気汚染に関して、日本が京都議定書に基づき提案していた「新造船のエンジンについて2016年以降、NOx(窒素酸化物)排出量を80%削減する」案を承認するとともに、Sox(硫黄酸化物)についても指定海域で2015年に0.1%、一般海域で2020~25年に0.5%削減することが決まった。

船舶からの排出ガスによる大気汚染の防止については、MARPOL条約(海洋汚染防止条約)付属書Ⅵが発行した2005年5月から規制が実施され、将来の技術水準の向上を踏まえて、発行後5年ごとに規制が見直しされることになっていた。

こうした動向に対応して日本では、NOxを2011年までに第2次規制として約20%削減するよう2007年以降技術開発を進め、2010年から実船実験に入る計画で、具体的には、日選択還元触媒(SCR)等の舶用化による排出ガス後処理装置月後処理装置導入に伴う配置及び利用の効率化に関する実態調査、艤装設計・艤装設計見直しによる機関室省エネ・省スペース化火燃料噴射系・制御系の改良、現存船エンジンデータ収集・燃焼解析等によるエンジン単体の燃焼改善技術、等の開発を進めている。

このルール改正により、現状の主機関を主体に想定した場合、舶用燃料油としてのC重油は通常の硫黄分が1.0%以上のため、船上に処理装置を設置しなければ、硫黄分が0.5%以下のA重油に転換せざるを得ないとされている。

しかし、舶用燃料油としてのA重油は、C重油と比べると供給体制、価格面からも問題があり、とはいえ2016年以降の第3次規制で目標とする80%のNOx削減となると、従来の脱硝装置では対応できないとされる。このため、「主機関単体での対応では限界があるので、前処理段階を含めた対応が必要」(某主機メーカー)として、主機メーカーを中心に舶用機器メーカーが提携して、急ピッチで新しい脱硝装置の開発を進めており、「本年秋には実験段階に入る予定」という主機メーカーもある。

国交省のまとめたIMO・MEPCの審議結果は次の通り。

IMO第57回海洋環境保護委員会(MEPC57)の審議結果について

国土交通省政策局海洋政策課、海事局造船課、海事局安全基準課

概要

1.大気汚染関係

・NOx3次規制案:日本提案の80%減、地域規制を承認。実施は2016年から。

・Sox規制案:指定海域は2015年に0.1%、一般海域は2020~25年に0.5%。

2.温室効果ガス(GHG)関係

・国際海運からの温室効果ガス削減対策に関する原則について合意。CO2排

出指標等具体策については、次回MEPC58での合意を目指して、作業を加

速化

3.シップリサイクル関係

・条約案最終化に向けた審議。

・中間会合を次回MEPC58の前週に開催。

4.バラスト水管理規制条約関係

・日立バラスト水浄化システム(Clear Ballast)基本承認を取得。

3月31日から4月4日まで、英国ロンドンの王立園芸学協会ホール(Royal HorticultualHalls)において、国際海事機関(IMO)第57回海洋環境保護委員会(MEPC57)が、我が国を含む91の国及び地域並びに50の機関からの参加により開催された。

我が国からは国土交通省、環境省、(独)海上技術安全研究所その他関係海事機関・団体から成る60名の代表団が出席し、我が国意見の反映に努めた。今次会合における審議結果の概要は以下の通り。

1.大気汚染の防止

船舶からの排出ガスによる大気汚染の防止については、MARPOL条約附属書Ⅵが発効した2005年5月より規制が実施されており、将来の技術水準の向上を踏まえて、発効後5年ごとに規制を見直すこととされている。このため、2005年のMEPC53から規制見直しが進められてきた。

(1)新造船のエンジンに対するNOx規制強化

日2次規制

今年2 月に開催されたBLG12(第12回ばら積み液体・ガス小委員会)で合意されていた、2011年からエンジンの定格回転数に応じて現行規制値(g/kwh)から15.5%~21.8%削減する案が、今次会合でも維持、承認された。

月3次規制

日本が提案し、BLG12で合意された2016年から指定海域において現行規制値から80%減とする案が維持、承認された。(別添解説参照)

(2)現存船のエンジンに対するNOx規制

現存船に搭載されたエンジンからのNOx規制について、BLG12において取り纏められた2つのオプションをベースに検討が進められ、以下の規制案が合意された。

日対象エンジン:

1990年以降に建造された現存船のエンジンのうち、シリンダー容積90l以上かつ出力5,000kw以上であり、主管庁が規制適合手法を有すると認めたもの

月規制値:

1次規制値

火規制実施時期:

主管庁が規制適合手法を認証し、IMOに通報してから1年以後の最初の定期検査

(3)SOx規制の見直し

SOx規制については、我が国は、安定的な燃料供給の確保及び費用対効果の最大化を図ることが必要とした上で、環境保護が必要な海域に限定し、その規制値(燃料中の硫黄分)を0.1%のレベルまで下げることによって、その目的は達成できることを主張した。

その他の主な主張としては、日アジア・中東諸国は、当面の一般海域の規制値は3.5%が限界とし、月船主国及び海運業界は、将来の安定的な燃料確保や代替措置を認めることを絶対条件とし、火燃料供給国及び石油業界は、留出油の供給には、20年程度の期間を要するとするとし、水欧州等の環境急進国及び団体は、2018年から全ての海域の留出油化を主張し、木欧州諸国・北米は、指定海域の規制値0.1%を主張した。

審議の結果、上記主張を踏まえた案として以下のとおり合意された。

  指定海域 一般海域
現行 1.5% 4.5%
2010年 1.0%
2012年 3.5%
2015年 1.0%
2018年
(次期規制開始時期を2020年又は2025年に決定)
2020/25年 0.5%
(留出油の限定なし。代替技術による達成も可)

注:主に大型船で使用されるC重油(残渣油)は通常硫黄分が1.0%以上であるため、本改正により、船上に処理装置を設置するか、硫黄分が0.5%以下のA重油に転換することとなる。

(4)今後の予定

今次会合で承認されたMARPOL条約附属書Ⅵ改正案は、本年10月に開催されるMEPC58で採択のための審議が行われる予定。

2.船舶からの温室効果ガス(GHG)削減対策関連

気候変動枠組み条約京都議定書は、その対象を附属書特に掲げる先進国に限定しており、国際海運については、第2条第2項において、国際航空とともに専門の国際機関(IMO,ICAO)を通じた作業によって、GHG排出量の抑制を追求することとされている。

我が国は、国際海運からのGHG削減策としては、技術革新や運航の効率化策といった実質的な排出削減策を優先させるべきとの考えから、今次会合に先立ち、「新造船の燃費効率を評価する指標(実燃費指標)を策定すること」を提案していた。

今次会合の主な結果は、次の通り。

(1)GHG排出削減対策に関する原則について

・1 地球規模のGHG総排出量の削減に効果的に貢献すること。

・2 抜け道を防ぐため、拘束力を有しすべての旗国に平等に適用されること。

・3 費用に見合う効果が得られること。

・4 市場歪曲を防ぐ(少なくとも効果的に最小化する)ことができること。

・5 世界の貿易と成長を阻害せず、持続可能な環境開発に基づくこと。

・6 目標達成型アプローチに基づくものとし、具体的手法を規定しないこと。

・7 海運産業全体における技術革新・研究開発の促進・支援に役立つこと。

・8 エネルギー効率分野における主導的技術に対応していること。

・9 実用的であって、透明性があり、抜け道がなく、管理が容易であること。

(2)CO2排出指標について

原則に関する議論を踏まえて行われた個別事項に関する審議において、指標についてはMEPC58での合意を視野に入れて以下の作業を行うこととなった。

日CO2排出設計指標(デザインインデックス)

個別の船舶の環境性能を示すCO2排出設計指標(わが国提案の実燃費指標もここに含まれる)については、その有効性及び必要性が認識され、我が国及びデンマークが関心を有する他国と共同して、規則化の草案を5月末までに作成し、中間会合(本年6月)で議論することとなった。

月CO2排出運航指標(オペレーショナルインデックス)

個別の船舶から実際に排出されたCO2量を示すCO2排出運航指標については、MEPC53で採択された「船舶からのCO2排出運航指標の自主的な試行に関するガイドライン」の見直しを行うことに合意した。今後、効率の観点からのCO2排出のベースライン決定方法の開発等について最終化を図る予定。

(3)燃料課金、排出権取引等の経済的手法について

船舶燃料への課金については、課金の徴収方法、得られた資金の配分方法等を含め具体的実施方法について詳細な議論が必要であること等の課題が指摘され、中間会合において詳細な議論を行うこととした。また、排出権取引(ETS)及びクリーン開発メカニズム(CDM)によるGHG削減手法の開発についても中間会合において検討することとした。

(4)その他の手法について

減速航行等自主的なGHG削減方法について、そのベストプラクティス(最良実行方法)に関する決議案を事務局が用意し、MEPC58での合意を目標に、中間会合において検討することとした。

(5)今後の予定

MEPC57の結果に基づき、本年6月23日から27日まで、ノルウェー・オスロにおいてGHG中間会合を開催することに合意した。

3.シップリサイクル

(1)背景・経緯

シップリサイクルに関しては、2009年5月の採択を目指してIMO新条約の策定作業が進められているところ、前回会合(昨年7月)及びシップリサイクル作業部会中間会合(今年1月)に引き続き、今次会合においても議題3「Recycling of ships」の下でワーキンググループを設置し、条約案の逐条審議が行われた。

(2)審議結果

今次会合での審議結果の概要は以下のとおり。

日条約策定にかかる今後の作業計画が見直された。

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