No.64:船員育成計画の支援策を推進 交通政策審が「日本船舶及び船員の確保に関する基本方針」答申

平成20年7月25日(金)Vol.64

船員育成計画の支援策を推進

交通政策審が「日本船舶及び船員の確保に関する基本方針」答申

 
交通政策審議会はこのほど、「日本船舶及び船員の確保に関する基本方針」を冬柴国土交通大臣に答申した。

これは先に、「安定的な海上輸送の確保を図るために必要な日本船舶、日本人船員の育成及び確保、その他関連措置に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため」、海上運送法に基づき同審議会に諮問されていたもの。

答申では、基本方針として (1)日本船舶及び船員の意義及び目標 (2)政府が実施すべき施策 (3)船舶運航事業?等が高ずべき措置 (4)日本船舶・船員確保計画の認定 (5)その他(関係者の協力、施策の評価の実施)についての基本的な事項 について具体的に指摘しているが、内航海運関係に絞ってみると、大要次のように示されている。

(1)日本船舶及び船員の意義及び目標

内航船員は、船舶の大型化による運航効率の向上と運航技術の進歩に伴い漸減傾向にある。そのため現在、雇用の需給が概ね均衡しているが、一部地域等においては内航船員不足の状況が顕在化している。また、45歳以上の内航船員の占める割合が64パーセントに上る等、高齢化が著しく、後継者不足等により、誓い将来、内航船員不足の深刻化が強く懸念されている。

このため、内航船員の計画的な育成及び確保を図ることにより、安定的な国内海上輸送を確保することは、大きな意義がある。

安定的な国内海上輸送を確保するためには、平成19年12月の交通政策審議会答申において、内航船員の将来見通しを試算したところ、5年後に約1,900人、10年後には約4,500人草度の船員不足が生じる可能性があるとされた。このため、5年後、10年後にこれらの船員不足が生ずることのないよう内航船員の育成及び確保を図ることを目標とする。

(2)政府が実施すべき施策

内航船員の高齢化の進展により著しい船員不足が見込まれるなど、内航船員の育成及び確保が喫緊の課題となっていることから、船員を集め、育て、キャリアアップを図り、陸上海技者への転身を支援するとともに、海事地域の振興を図るための予算措置を講じ、船員の育成及び確保に積極的な船舶運航事業者等を支援する。

具体的には、(a)内航海運業界のグループ化を通じた船員の計画的な育成及び確保や、 (b)資格取得を通じた採用ニーズに即した人材の育成、 (c)退職自衛官、女性などの新たな船員供給源からの船員の育成及び確保等、船員の育成及び確保策に計画的に取り組む事

業者にインセンティブを付与する観点から、支援措置を講じる。

(3)船舶運航事業者等が高ずべき措置

内航船員の高齢化が著しく進展し、今後は外航海運や漁業分野からの経験豊富な即戦力となる船員の参入に多くは期待できないことも踏まえ、内航海運事業者は、船員未経験者等の採用を促進し、自ら積極的にキャリアアップのための教育訓練を実施することが求められている。また、内航海運事業者は、内航船員を育成及び確保する主体として、計画認定制度を活用し、 (a)内航海運業界のグループ化を通じた内航船員の計画的な育成及び確保や、 (b)資格取得を通じた採用ニーズに即した人材の育成、 (c)退職自衛官、女性などの新たな船員供給源からの内航船員の育成及び確保等に努力するべきである。

本制度の活用を含め、個々の内航海運事業者において、船員を育成し、確保を図る具体的な取組みをこれまで以上に積極的に実施することが期待される。

(4)日本船舶・船員確保計画の認定

船員教育機関を卒業した者のうち船員としての経験がない者、船員教育機関を卒業した者以外の者のうち新たに船員になろうとする者、女性であって船員(運航要員に限る。)になろうとする者又は退職自衛官のいずれかについて、採用及び訓練(退職自衛官等の船員経験者を計画的に採用する場合であって、採用後にキャリアアップのための訓練を実施する必要がない場合を除く)を行う計画であること。

次のいずれかに該当する計画であること。

イ) グループ化の促進に係る事業

グループ化を通じて、船員教育機関を卒業した者のうち船員としての経験がない者、船員教育機関を卒業した者以外の者のうち新たに船員になろうとする者のいずれかを計画的に採用し、かつ、採用後に訓練を計画的に実施する計画であること。

ロ) 船員の資格取得促進に係る事業

船員教育機関を卒業した者のうち船員としての経験がない者、船員教育機関を卒業した者以外の者のうち新たに船員になろうとする者のいずれかを計画的に採用し、これらの者が業務に従事する上で必要となる資格の取得のための訓練を計画的に実施する計画であること。

ハ) 新規供給源からの採用促進に係る事業

新規供給源から船員を計画的に採用し、かつ、採用後に事業内容に応じて必要な訓練(退職自衛官等の船員経験者を計画的に採用する場合であって、採用後にキャリアアップのための訓練を実施する必要がない場合を除く)を計画的に実施する計画であること。

ニ) 船員の計画雇用促進に係る事業

退職予定船員数や予備船員数の状況等を踏まえ、事業を円滑に実施するため、船員教育機関を卒業した者のうち船員としての経験がない者を計画的に採用し、かつ、採用後に上級資格の取得その他の訓練を計画的に実施する計画であること。

(5)その他(関係者の協力、施策の評価の実施)についての基本的な事項

近い将来、高齢化の進展等による船員不足の深刻化が確実視される中、今後、若年船員を安定的かつ計画的に確保し、円滑に海技の伝承を行って世代交代を進める必要性は高い。

毎年度、施策の実施状況について交通政策審議会海事分科会に報告することとし、また、日本船舶及び船員の確保の施策の効果について適当な時期において評価することとし、必要があると認めるときは、今後、新たな制度的枠組みについて検討を加え、必要な措置を講ずるものとする。

日本船舶及び船員の確保に関する基本方針について(概要) PDF

バックナンバー>>