令和4年度事業の概況

我が国経済は、コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進みつつある中、緩やかな持ち直しが続いているが、デジタル化の急速な進展など社会に大きな変化をもたらしつつある。

その一方で、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化を受けて、グローバルな経済活動の基盤である国際秩序が根底から揺らぐとともに、世界的なエネルギー・食料価格の高騰や欧米各国の金融引締め等による世界的な景気後退懸念など、我が国経済を取り巻く環境は、より厳しさを増している。

内航海運業界は、令和3年8月に暫定措置事業が終了し、同事業の適用を受けないことから自由な船舶建造ができるようにはなったが、令和4年3月末現在の内航船腹量の船齢別構成をみると、船齢14年以上の老齢船は、隻数比71%、総トン数比は24%を占めている。

船齢別平均船型についても、14年未満が1,329総トンとなっているものに対し、14年以上の老齢船が546総トンとなっており、小型船ほど老齢化が進んでいるのが現状である。

代替建造が進まない要因として、ウクライナ情勢悪化に端を発する燃料価格の高騰や為替の歴史的円安等、その影響が原材料価格にも及び、鋼材価格も急騰していることから、建造船価も上昇、船価高騰を理由に建造計画が白紙となった船主も一定数存在した。

船価高騰は勿論の事ではあるが、中長期的な事業計画を踏まえ、荷主とオペレーターの主導で代替建造の要否の判断を行い、船主がそれに従うという構図が改めて浮き彫りとなった。

その内航船舶の運航に従事する船員の年齢構成をみると50歳以上が5割を超え高齢化が進んでいる。

船舶の高齢化と船員の高齢化、この二つの高齢化が内航海運の喫緊の課題となっており、安全安定輸送を目指すには、厳しい環境下に於いても運賃・用船料の改善を推進していくことが不可欠であり重要な課題となっている。

荷主を含め船主、オペレーター等関係者が、危機意識を共有していくことが求められる。

又、今後の船員確保・育成対策に資するため、当連合会は総連合会と協力し、商船系高等専門学校生を対象とした3級海技士の養成及び海技教育機構の学生を対象とした4級海技士の養成並びに水産系高校の学生を対象とした養成についても対策支援を行った。

多様な人材が内航海運へ導入されるよう、船員養成機関卒業生以外の一般社会人からの内航船員への採用を促進する為、海洋共育センターが実施する民間完結型6級海技士(航海・機関)養成課程等の効率的な運用等を当連合会も全面的に支援しており、将来を見据えた対応を図っている。

令和4年度実施の内航貨物船員計画雇用促進助成制度では、当連合会に於いては、12業者35名を対象に約546万円が交付され、若年船員育成への支援を行った。

又、船員の働き方改革に伴い、改正法の施行により、船舶所有者に船員の労働時間を管理する「労務管理責任者」を選任する義務が課せられたことから、「労務管理管理者講習」を令和4年度は、全国9か所で実施、952人が受講し、内当連合会所属の事業者は、378人であった。

尚、STCW基本訓練対策については、組合員の船員向けの訓練実施について、日本船員雇用促進センター(SECOJ)と調整を行い、内航船員の訓練実施人数の拡大を目指し、空白地域の解消や訓練料金の低廉化のため、総連合会と共に当連合会はこれらを支援している。

令和4年度実績は、全国6か所で実施、109人が受講し、内当連合会事業者の船員は、26人であった。

又、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けて、令和4年度においてもPCR検査等を実施した組合員に対し、その費用の一部に対し助成金を交付した。

当連合会に於いては、149業者を対象に約1,346万円が交付され、コロナ禍での事業者負担軽減に大きな効果をもたらした。

以上のように当連合会は、組合員の要望・国の施策実施等多様な問題に対応し、理事会等の審議を通じて意見集約を図り、総連合会をはじめとする関係機関等への具申を行った。

 

以 上