令和2年度事業の概況

我が国経済は、令和元年(2019)度後半から中国経済の減速と、米中通商問題や英国のEU脱退に端を発する欧州経済の影響により、製造業及び非製造業とも急速に停滞感を強め、これに加え消費増税が悪影響したとされている。
さらに、新型コロナウイルスが蔓延したことにより、インバウンド需要の落ち込みとともに、中国の内需悪化等により我が国も輸出及び生産活動が大きな打撃を受けた。
新型コロナウイルスの急速な感染拡大には米国、欧州を始め世界的に非常事態態勢での都市封鎖が拡大し、令和2年度には経済活動の停滞から景況の低迷振りが平成20年(2008)のリーマンショックを上回り、昭和62年(1987)のブラックマンデーを端緒とする世界同時不況や、古くは昭和4年(1929)のブラックチューズデーから始まった世界大恐慌にも並ぶと懸念されつつある。

そのような中にあって内航海運を取り巻く環境は、高炉会社の設備一部休止、自動車メーカーの需要減退と部品供給の停滞からの製造一時休止等により低迷した。
とりわけ令和2年度の粗鋼生産量は8,279万トンと昭和46年(1971)度以来の9,000万トン割れはとなった。これは10年振りに粗鋼年産1億トン割れとなった昨年(2020)度に比べても、さらに16%の2桁減で4年連続の減少を示した。
また、石油製品も環境問題からの火力発電向けの需要減少と省エネによる販売低迷が大きく響き、令和2年度の燃料油生産量(実績見込み)が1億5,120万㎘と前年度比6.5%減を示し、月別実績でも令和3年2月には前年同月比16%の2桁減で16カ月連続の前年割れとなっている。

一方、平成10年(1998)度から実施されて来た内航海運暫定措置事業は、令和3年(2021)8月の返済をもって借入金が完済することとなり、今後の内航海運のあり方について、国土交通省交通政策審議会海事分科会船員部会及び基本政策部会において審議されている。
これに伴い同事業による建造等公募が令和3年7月期をもって、昭和42年(1967)12月の第1回建造等調整公募開始以来53年振りに打ち切られることとなった。
内航船腹量の船齢別構成をみるとそれでもなお、令和2年3月31日現在で船齢14年以上の老齢船が隻数比で70%を占め、圧倒的にその占有率が高く、その内航船舶の運航に従事する船員のうち60歳以上が85%を占めている。
即ち、船舶と船員の2つの高齢化が依然、内航海運にとつての大きな課題となっているが、安全安定輸送を目指す内航海運がこの抜本的改善を図るためには、昨今の景況から鑑みてその実現が厳しい環境の中でも、運賃・用船料の改善を推進して行くことが喫緊の課題であるといえよう。

我が国では数年来、社会的問題となっている少子化傾向の中で、全産業で若年労働力の絶対数が毎年減少傾向にあるが、特に内航海運を支える船員については、高齢化により将来の人手不足が懸念される中、陸上との人材確保競争が激化しており、働き方改革を通じて内航船員という職業を魅力ある職業へと変えていく必要に迫られている。一般社会人も対象に小型船に適合した船員を養成するシステムの「一般社団法人海洋共育センター」に対する期待が一層膨らんでおり、当連合会は全面的にこれを支援している。

一方、内航海運業のあり方については、国土交通省 交通政策審議会海事分科会の基本政策部会、船員部会において現下の課題を取り纏め、その解決に向けた検討のため、荷主関連業界及び内航海運業界からのヒアリングに加え、他業種の取り組み状況についてもヒアリングし、有識者を交えて今後の内航海運のあり方について総合的に検討している。
また、船員部会においては、船員の働き方改革の実現に向けて、船員の労働環境の改善、船員の健康確保、船員の働き方改革の実現に向けた環境整備について検討されている。

このように、内航海運業界が大きな転換点を迎えようとしている今、前述の通り、内航海運業者の事業基盤強化、船員不足、高齢化の懸念などの課題に取り組む一方、先進的な技術の研究開発や既存技術の信頼性向上等を推進することにより、内航海運の課題解決につながるものと期待されている。

そのため、上記に係る関係法令の一部改正が令和3年2月5日、概要下記の通り閣議決定された。
◇船員の使用者による労務管理責任者の下での船員の労働時間等の管理、労働時間等に応じた適切な措置の実施等『船員法の一部改正』
◇船員派遣の場合の派遣先の適切な労務管理の実施『船員職業安定法の一部改正』
◇内航海運業に係る契約の書面交付義務、荷主に対する勧告の公表制度の創設、船舶管理業の登録制度の創設等『内航海運業法の一部改正』

さらに、総連合会では新型コロナウイルス感染防止対策として、令和2年度に「PCR検査等」を実施した組合員に対し、その費用の3割を限度として助成を交付することとした。当連合会においては47事業、対象額は約1,700万円、交付額(3割)約500万円となった。

当連合会は、このような多様な問題に関し、担当委員会等の審議を通じて意見を集約し、関係方面に具申している。
 

以 上