令和3年度事業の概況

我が国経済は、昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の拡大と行動制限措置の長期化により、対面型サービス業を中心に消費低迷が継続しており、非常に厳しい状況下にある。

社会経済活動の正常化や政府の各種政策の効果等により、景気の持ち直しが期待されるところではあるが、ウクライナ情勢を含む地政学リスクや感染症の動向等、不透明感が強い中で、原油価格等の高騰が続いており、家計や企業の負担増が懸念されると共に、先進国ではインフレ傾向が加速している。

生産と輸出の動向は、半導体不足と東南アジア等の感染再拡大に伴うサプライチェーンの混乱により、自動車産業を中心に大きく落ち込んでいる。

一方で、内航海運では、平成10年から実施されてきた内航海運暫定措置事業が鉄道建設・運輸施設支援機構(JRTT)からの借入金を令和3年8月に完済し、同事業が終了となった。

今後は、既認定船の竣工等手続きに関する業務を除いて、同事業の実質的終了を受け、適用は受けないことから自由な船舶建造ができることとなるが、令和3年3月現在の内航船腹量における船齢別構成をみると、船齢14年以上の老齢船は隻数比68%、総トン数比は45%を占めている。

それと共に、内航船舶の運航に従事する船員の年齢構成をみると50歳以上が5割を超え、高齢化が進んでいる。

船舶の高齢化と船員の高齢化、この二つの高齢化が内航海運の喫緊の課題となっており、安全・安定輸送の確保には厳しい環境下に於いても運賃・用船料の改善を推進していくことが不可欠であり、重要な課題となっている。

今後は、荷主を含め関係者が危機意識を共有していくことが求められてくる。

その一方で、今後の船員確保・育成対策に資するため、又、多様な人材の導入、船員養成機関卒業生以外の一般社会人の内航船員への採用を促進する為、一般社団法人・海洋共育センターが実施する民間完結型6級海技士(航海・機関)養成課程等が大きな成果を上げている。

当連合会においても、同養成課程の効率的な運用等、全面的に支援しており、将来を見据えた対応を図っている。

又、令和3年5月には、「海事産業強化法」が公布されて、内航海運業における取引環境の適正化及び生産性向上並びに船員の働き方改革などを目的として「内航海運業法」及び「船員法」並びに「船員職業安定法」が改正された。

当連合会に於いても総連合会と共に、法の適切な施行に向けて、国土交通省と調整を行ってきた。

尚、改正法の施行により、船舶所有者に対し、船員の労働時間を管理する「労務管理責任者」を選任する義務が課せられるとともに、選任された労務管理責任者に必要な講習を受けさせるなどの努力義務も課せられる等、事業者としても責任ある対応を求められている。

一方で、政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言し、令和3年12月には国交省のカーボンニュートラル推進に向けた検討会でその施策等が取り纏められることとなった。

内航海運業界に対しては、地球温暖化対策見直し後の内航船舶の2030年度CO2削減目標マイナス181万トンを達成するために更なる省エネを追求した連携型省エネ船の開発と普及、バイオ燃料の活用等による省エネと省CO2に取り組む事と我が国の2050年カーボンニュートラル達成へ貢献するために先進的な取り組みとして、水素、アンモニア燃料船等の技術開発を進めるべく、この二つの達成に向けて、ロードマップが示された。

内航業界としても関係者と連携して積極的に取り組んでいくことが肝要である。

又、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けては、令和2年度に引き続き、令和3年度においてもPCR検査等を実施した組合員に対し、その費用の3割を限度として助成金を交付した。

当連合会に於いては、104業者を対象に約1,260万円を交付する等コロナ禍での事業者負担軽減に大きな効果を果たした。

以上のように当連合会は、組合員の要望・国の施策実施等多様な問題に対応し、担当委員会等の審議を通じて意見集約を図り、総連合会をはじめとする関係機関等への具申を行った。
 

以 上