平成30年度事業の概況

 本年度の我が国経済は、地震、集中豪雨、台風等度重なる大きな災害に見舞われ、国内物流が一時乱れたものの、世界的な景気回復の継続に加え、安定した安倍政権の下、雇用・所得環境の一層の改善、技術革新や人手不足に対応した企業の投資意欲の高まり、更には2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックに向けて内・外需が共に安定し、緩やかな景気回復の基調が続いていた。

 しかし、第4四半期に入り、英国のEU離脱問題に伴う欧州経済の陰りや米中の貿易摩擦等により、海外経済の減速が景況感の悪化につながった。
 斯様な中、企業の設備投資も含めた民間設備投資は緩やかな伸びを見せているが企業収益の伸びと比べ、個人消費は昨年同様伸びていない。労働人口の減少による人手不足も相俟って、陸上に於けるトラック運賃値上げが話題をさらっているが、一般国民は輸送費が値上がりして負担が増加したとの感が強く、逆に景気の回復を実感として捉える事は困難な状況であった。

 更に、平成30年度は日本列島全体が大きな災害に見舞われた年であり、東日本大震災や熊本大地震の復興事業に加え、東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた公共事業等の推進と相俟って内需の拡大を期待している処であるが、団塊世代の離職時期も重なり、総労働人口が減少して労働力不足に陥ったことにより、期待していた景況感は得られていない。

 斯様な背景の中、内航海運を取り巻く環境は、主要元請けオペレーター60社の輸送動向調査によれば、災害等による一時的な物流の停滞はあったものの船舶はフル稼働状態にあり、貨物船にあっては東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた公共事業等の推進による鋼材、建設資材等が伸びると共に、雑貨等も九州・沖縄向けが伸びている。
 一方、自動車については若者離れやシェア利用も徐々に影響が出始めているのか、従来のような高率な出荷輸送は見られなくなってきたものの、依然安定した好調を保ち、貨物船全体の輸送量は前年度に比べ微増となっているが、油送船にあっては火力発電所向け燃料の他への転換、節電・省エネ意識の高まりから、需要期である冬期に入っても黒油が前年度に比べ20~25%前後の減少を呈し、白油も一時的な寒冷はあったものの全体的に暖冬傾向であった事から需要が得られず、苦戦を強いられると言う状況は昨年度と変わらなかった。

 また一方、老齢船は総船腹隻数の71%を占めており、安全安定輸送が危惧される中で、代替建造促進の原資となる運賃・用船料の低迷は依然として続いている。
 更には、燃料油価格は本年度も徐々に高値傾向で推移しており、組合員が厳しい事業経営を強いられている状況は改善されず、閉塞状態が続いている。
 加えて、2020年1月からのSOx規制への対応は海事関係事業者、石油生産事業者、関係行政三位一体となってその対応方法を模索している処であるが、コスト上昇も懸念され、深い関心を持って注視しているところである。

 斯様な状況にある中で、本年度に於ける新船建造は、昨年度同様の建造意欲が維持され、暫定措置事業の早期収束に向けて順調な経過を辿っている。
 その結果、本年度に於いても順調に建造納付金収入が伸びたことから、本年度は47億16百万円返済し、年度末借入金残高は117億94百万円に縮小された。

 更に、運賃・用船料適正化を目的に活動展開している船主連絡協議会では、契約更改に向けた用船料修復運動の一環として、平成15年度を皮切りに毎年、鉄鋼・石油・ケミカル等の各主要オペレーターを訪問し、用船料の修復方協力要請と共に船主とオペレーターが共生していくための意見交換を行って来ている。本年度に於いても毎年算定している「新造船のあるべき船舶経費」を見直し、個々の用船契約交渉の参考資料として提供する一方、熊本市に於いて地方大会を開催し、船主の意見を聴取して参考にしながらオペレーター訪問を実施した。

 また、数年来社会的問題となっている少子化傾向に伴い、全産業における若年労働力の絶対数が毎年減少傾向にあるが、特に内航海運業界においては船員の高年齢化が進む一方、若年船員の安定的な確保が困難な状況となっている。
 船舶の安全運航に大きな要素を占めている船員労働力の安定的確保と言う課題については、労働条件・労働環境等、組合員事業者自ら魅力ある職場環境の整備を進めると共に、若年船員OJT(船上教育訓練)制度の活用と日本船員雇用促進センター(SECOJ)との連携によるトライアル制度の活用により、若年者の内航海運への就労を促進している処である。
 斯様な中、昨今は労働人口減少の中にあって、船員教育機関への応募者が増加傾向にあり、定員枠から漏れた若者を如何にして海運業界に取り込むか、今後の課題とするところである。
 その一方、海技教育機構にあっては、現存する中学卒業生を対象とする海上技術学校の教育を、高校卒業生を対象とする航海・機関に特化した海上技術短期大学校にする方向で検討が進められており、特に船員を職業としたいとする北海道内の中学校卒業生に人気がある小樽海上技術学校に関しては、校舎の老朽化を理由に廃止を検討するという、若者の希望の芽を摘む施策が進められようとしている。総理大臣を本部長とする海運立国を標榜している行政の方向性に多少なり疑問を感じる処であるが、内航海運業界としては、船員不足問題が指摘されている中で、若年船員の確保と定着率の向上等、労働環境の改善と魅力ある業界構築が急務の課題となっており、一般社会人をも対象とする小型船に叶った船員養成システムである処の「一般社団法人海洋共育センター」に対する期待が一層膨らむと同時に、当連合会は全面的に支援している処である。
 また、本年度は陸上における働き方改革の議論・実施が先行したことから、国交省海事局においても海上労働者に対する働き方改革を推進することとしており、その結果、内航事業者の中には物流の停滞が引き起こされないかと危惧する向きもあるが、内航海運の諸問題解決には内航海運業界に責任を押しつけるのではなく、荷主の理解が必要不可欠であることを、行政を筆頭に訴えていく必要がある。
 斯様な環境にあって、船員労働力の安定的確保問題は、内航海運業界喫緊の最重要課題の一つであった。

 更に、内航海運活性化プロジェクトチーム(活性化PT)は、全国青年経営者の方々との意見交換をする中で、青年経営者の要望を常に真摯に受け止め理事会に報告すると共に迅速な対応を行い、継続要望事項であった機関部職員不足の顕在化への対応については、国交省海事局担当課を交え意見交換を経て、「内航未来創造プラン」に課題の1つとして取り上げて頂き、「509総トンまでは499総トンと見做す」との取り扱いが行政の賛同を得、全海運の意見・要望が実現した処である。

 又、暫定措置事業については、堅調な建造申請により、建造納付金の収入が順調に納入され、収支相償う時期が一層前倒しになる可能性が生じて来ていることから、終了後の中央組織・事業のあり方等について、具体的な検討を議論している処である。

 当連合会はホームページを通して組合員各位への迅速な情報提供とあらゆる情報の共有化推進に努めており、常に見やすく親しみのあるページの作成に一層の努力を傾注し、広く一般世間に対する内航海運業界の広報媒体としての定着を目指し、その充実に努めている処である。

 斯様な状況の中で、当連合会は多様な問題に対し、構成機関等の審議を通じて広範な意見集約を行い、全海運意見として関係方面へ具申した。

 

以 上