組合員の皆様へ

新年のご挨拶

全国海運組合連合会
会長 藏本 由紀夫

 皆様、新年明けましておめでとうございます。

 令和2年の年頭にあたり一言ご挨拶を申し上げます。

 昨年は、新元号[令和の幕開け]の発表から天皇の退位(生前退位は202年ぶり)、改元に伴う新天皇の即位という歴史的な動きがありました。

 そして国内では、2002年12月から[いざなみ景気超え] という景気拡大が過去最長を更新したものの、反面、7月には第25回参議院選挙が行われ 投票率48.80% と24年ぶりに50%下回るという国民の政治に対する無関心さが表面化した年でもありました。その他にも、安倍首相のイラン訪問中にあったホルムズ海峡で日本などのタンカーが襲撃された事件や、「老後に自己資産2000万円必要」発言による年金問題、厚労省が勤労統計調査の不適切調査を謝罪、政府基幹統計56のうち4割に間違いおよび問題が発覚しそのほとんどに統計法違反の疑いがあるといった案件など、様々な課題が顕在化してきました。

 更には、非常に強い台風15号が関東を直撃、各地で観測史上1位の最大瞬間風速を記録し、多くの都市・地域が深刻な豪雨災害に見舞われるなど、昨年に続き幾多の台風上陸による影響を受けた年となり、北海道・佐呂間で観測史上最高の39.5度を、5月では全国でも過去最高気温を記録するなど、昨今のゲリラ豪雨や台風、地震など自然災害からは今後も逃れられそうにありません。

 こうした中、業界では平成29年6月に報告された内航未来創造プランにおいて、目指すべき将来像を「安定的輸送の確保」と「生産性向上」 の2点を軸として位置づけ、その実現に向け「内航海運事業者の事業基盤強化」「先進的な船舶等の開発・普及」「船員の安定的・効果的な確保.育成」「その他課題対応」の4つを具体的施策として盛り込み、その計画に向けた活動に現在も取り組んでいるところです。

 しかし、「内航海運事業者の事業基盤強化」については、登録船舶管理事業者制度を創設し現在25社の登録申請があるものの、更新時の評価制度については未だ公表されておりません。また、安定&効率輸送協議会が設置されたものの効果的・計画的な議論に至っていない状況です。

 「先進的な船舶等の開発・普及」においては、IOT技術を活用した自動運航船の実用化に向けた開発と議論が進められており、労働環境の負担軽減はじめ安全運航を担保すべき技術革新に期待するところです。

 また、地球温暖化対策計画における内航海運のCO2排出量削減目標の達成に向け、 企画・設計段階で革新的省エネ・省CO2技術(ハード対策) と運航・配船の効率化(ソフト対策)の効果を「見える化」する内航船省エネルギー格付け制度を平成29年7月より暫定的に開始し、平成30年9月末時点で19件に格付けを付与しています。先に述べた豪雨災害の頻発などは内航輸送へのモーダルシフト推進に加えて、内航輸送そのもののCO2削減を進めることによってその緩和に寄与することができるものです。

 そして、業界の最重要課題であり喫緊の課題でもある「船員の安定的・効果的な確保.育成」については、公的海技教育における見直し(「船員育成の改革に関する検討会」)や、業界においては「民間が行う船員育成・養成事業検討WG」において議論され、官民其々の役割を適切に果たし、官民間の連携強化により具体的方向性が示されることを待ち望んでいるところであるとともに、そのようになるよう働きかけていかなければなりません。

 こうした中、内航海運業法施行規則等の一部改正により、船員育成船舶としての509総トン数の建造申請が既に5隻認定されたことは大きな成果と言えるでしょう。

 また、2020年1月からのSOx規制強化への対応も、昨年(2019年)6月から9月にかけ12隻の内航船を用いて実証実験を行い、全て問題なく運航できたとの報告を受けております。低硫黄による動粘度や流動点など、メーカー各社によるばらつきや、輸入混合油や価格の問題など懸念材料が残ったまま随時低硫黄燃料への切り替えることとなりますが、内航総連合会ではこれらの問題発生に対応すべき相談窓口を設置したところです。

 我々全国海運組合連合会は、昭和15年に第1次全国機帆船海運組合連合会設立以降、昭和33年現在の組織に改組される歴史的な変遷を経て、小型船事業者が中心に先人が築き上げた組合です。そして現在も全国18の海運組合と40の地区組合・支部を有し、約1,570もの事業者が構成する組織です。会長として全海運を率いる責任を重く受け留め、半世紀以上行ってきた船腹調整事業から暫定措置事業というカルテル行為の終了に際し、将来あるべき組織と事業に対する方向性を早期に示す必要があると強く感じています。そしてその為のアンケート調査を昨年実施するとともに、各地区組合の会合にも積極的に参加し多くの意見を伺って参りました。今年はこれまでの活動と事業者の意見を取り纏めて今後の議論に活かしていかなければなりません。暫定措置事業終了後の新たな事業・中央組織の制度設計、船員不足問題の解決とその中での働き方改革と生産性向上の両立、環境規制強化への戦略的対応等、内航海運業界に反映されている日本の現在の課題を、組合員お一人お一人とともに議論し解決していきたいと考えています。

 庚(かのえ)の年は、前年の己(つちのと)までで完成した自己から不要な価値観をそぎ落とし、新しい環境へ対応する体制を整える年と言われています。

 そのためには、残すべきものを見極めるべく、今までのやり方やあり方と向き合うということも必要になってきます。

 子の年は、さまざまなことが新しく始まる局面であり、個人は、自分の軸となる価値観を持って進む、組織は、新たな局面に対応できる人材の育成・活用に取り組むと良い年です。

 十干と十二支がそろって意味していることは、新しい時代、新しい自分への変化を遂げていくという年と理解し、新しい業界を創るために事業者一人一人の意識改革と、皆様の力を結集し、災害時の緊急輸送はじめ国の安全保障、治安維持、生活物資の安全・安定輸送の確保、環境保全への関与など、国民の理解と協力並びに関係機関との連携の下で内航海運業界が持続的発展していけるよう事業者の皆さんと尽力して参る所存です。

 最後に、新しい年が皆様にとって明るい将来に繋がる年になりますことを祈念致しまして、新年のご挨拶と致します。

 


 


 令和2年1月1日