No.804:生産 前月比2カ月連続上昇経産省 7月の鉱工業生産動態統計速報発表
No.805:粗鋼生産 5カ月連続大幅減燃料油生産 9カ月連続前年比減経産省 7月の生産動態統計速報発表
No.806:国内販売 10カ月連続前年比割れエネ庁 7月の石油統計速報発表

令和2年9月16日(水)Vol.804

生産 前月比2カ月連続上昇

経産省 7月の鉱工業生産動態統計速報発表

経済産業省は8月31日、7月の鉱工業生産動態統計速報を発表した。それによると、7月の鉱工業生産は、前月比8.0%と2カ月連続の上昇。国内外の経済活動再開の動きに伴い、今基準内最大の上昇幅となった。今後の新型コロナウイルス感染症の影響にも注意する必要があるが、7月の生産の基調は「持ち直しの動き」が続いていると判断している。

7月の鉱工業生産は季節調整済指数86.6、前月比8.0%と2カ月連続の前月比上昇となった。7月当初の企業の生産計画では前月比11.3%上昇、これに含まれる過去のバイアスを補正した試算値では、最頻値で前月比3.1%の上昇だったが、試算値を大幅に上回る上昇となった。

生産は、2月以降新型コロナウイルス感染症の影響が現れ、5月まで4カ月連続での低下となり、指数水準も大幅に低下していたが、6月、7月と連続で上昇した。特に7月の上昇幅は、今基準内で最大となっているが、7月の指数値86.6は、今基準内で4番目の低水準にあり、依然低い生産水準にとどまっている。

前月比12業種上昇 3業種低下

7月の鉱工業生産を業種別にみると、全体15業種のうち12業種が前月比上昇、3業種が前月比低下という結果だった。

7月は、特に自動車工業の上昇寄与が大きく、次いでその他工業、鉄鋼・非鉄金属工業等が上昇に寄与していた。

上昇寄与の最も大きかった自動車工業は前月比38.5%の上昇で、2カ月連続での大幅な上昇となった。普通乗用車、駆動伝導・操縦装置部品、自動車用エンジン等が上昇要因となっている。新型コロナウイルス感染症の影響で、大幅に生産調整さていた乗用車の生産が回復しており、それに伴い部品の生産も増加したことが上昇の要因としてあるようだ。

上昇寄与2位のその他工業は前月比9.0%の上昇で、6カ月振りの大幅な上昇だった。乗用車用タイヤ、工業用ゴム製品等が上昇要因となっている。乗用車や自動車部品の生産回復に伴う生産の増加等が上昇の要因としてあるようだ。

上昇寄与3位の鉄鋼・非鉄金属工業は前月比9.7%の上昇で、5カ月振りの上昇だった。ダイカストや鉄系鍛工品、銑鉄鋳物等が上昇要因となっている。自動車向けの生産の増加が上昇の要因にあるようだ。

出荷 前月比6%の大幅上昇

7月の鉱工業出荷は季節調整済指数85.3、前月比6.0%と2カ月連続の大幅な上昇となり、今基準内で最大の上昇幅となった。国内外での経済活動の再開の動きに伴い、内需・外需とも回復がみられたことが、出荷の上昇につながったものと考えらる。

業種別にみると、全体15業種のうち12業種が上昇、3業種が低下となった。

上昇寄与業種としては、寄与度の大きい順に自動車工業、鉄鋼・非鉄金属工業、電気・情報通信機械工業等となっていた。

財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、生産財の出荷は前月比10.2%の上昇、最終需要財の出荷は前月比2.1%の上昇だった。

最終需要財の出荷について内訳ごとにみると、まず消費財については出荷が前月比8.7%で、2カ月連続の上昇となった。特に耐久消費財の出荷は乗用車の大幅上昇の影響が大きく、前月比24.7%と2カ月連続の上昇となった。非耐久消費財の出荷は前月比0.4%と2カ月連続の上昇だった。

一方、設備投資に使われる財である資本財(輸送機械除く)の出荷は、前月比0.9%減と、2カ月振りの低下となった。

また、建設財は前月比0.8%と2カ月連続の上昇となった。

在庫 4カ月連続低下

7月の鉱工業在庫は季節調整済指数99.2、前月比1.6%減と、4カ月連続の低下となった。4月まで高めの水準が続いていた在庫だが、その後の生産調整が進められる中で、在庫調整も進んでいるようだ。

業種別にみると、15業種のうち13業種が低下、2業種が上昇となった。低下寄与が大きかった業種としては、鉄鋼・非鉄金属工業、無機・有機化学工業、化学工業(無機有機化学工業・医薬品除く)等が挙げられる。

生産基調「持ち直しの動き」継続

7月の鉱工業生産は、2カ月連続の前月比上昇となった。生産は、新型コロナウイルス感染症の影響で2月以降、5月まで低下が続いていたが、この生産の低下傾向が一旦底を打ち6月、7月と上昇が続いている。

この背景には5月まで感染症の影響により、自動車工業を始めとして大幅に生産調整されていたが、国内外での経済活動再開の動きに伴い、需要の回復等も進み、7月も生産調整からの回復により、生産が上昇したと考えられる。生産水準は依然低いとはいえ、幅広い業種で生産に上昇がみられる。

また、先行きに関しては企業の生産計画で8月、9月が上昇となっている。企業の生産計画に元々含まれている上方バイアスを考慮すると、先行きは7月ほどの勢いのある上昇が続くとは考えにくいものの当面、持ち直しの動きが続くことが期待されるところだ。一方で、最近の感染症の感染再拡大の影響等についても引き続き注意してみていく必要がある。

経産省ではこうした状況を踏まえ、鉱工業生産の7月の基調判断については、6月の「生産は下げ止まり、持ち直しの動き」から「下げ止まり」の表現は削り、「生産は持ち直しの動き」が続いているものと評価する一方で、「8月以降の生産の動向についても十分注意してみていきたい」としている。

8月調査の予測

主要企業の生産計画を調査した製造工業生産予測調査によると、8月は前月比4.0%の上昇、9月は同1.9%の上昇見込みである。

8月の上昇業種は輸送機械工業、汎用・業務用機械工業、化学工業等。9月の上昇業種は輸送機械工業、電気・情報通信機械工業、パルプ・紙・紙加工品工業等となっている。

製造工業生産予測指数/生産計画から見る生産動向(季節調整済前月比%)

2020年8月見込み 2020年9月見込み
2020年8月調査(今回) 4.0 1.9
2020年7月調査(前回) 3.4

予測数値の補正値試算

製造工業生産予測指数の先行きを試算した補正値は、8月が1.7%の低下見込み。なお、7月の補正値は3.1%であったが、鉱工業生産指数の7月の前月比は8.0%であった。

製造工業生産予測指数の補正値(季節調整済前月比%)

補正値 予測調査結果
8月前月比 -1.7(-2.6~-0.7) 4.0

上段の数値が、最も可能性の高い値(最頻値)。最頻値とならない場合でも、( )の幅の中に90%の確率で収まるという計算結果になっている。

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令和2年9月16日(水)Vol.805

粗鋼生産 5カ月連続大幅減

燃料油生産 9カ月連続前年比減

経産省 7月の生産動態統計速報発表

経済産業省は8月31日、7月の生産動態統計速報を発表した。粗鋼生産量は604.5万トンと前月比7.6%増だが、前年同月比27.9%の大幅減となった。前月比では増加に転じたものの、前年同月比では5カ月連続の減で、年産ベースに引き直すと依然7,250万㌧台の低水準にある。主要品種別にみても軒並み前年同月比とも大幅減少を示しており、新型コロナウイルス蔓延による世界同時不況の中で“鉄冷えが”止まらない。

また、石油製品生産量は燃料油計が1,014.4万㎘と前月比7.0%増だが、前年同月比26.9%の大幅減となり、前年同月比で9カ月連続の減となった。主要油種が揃って前月比で増加をみせたものの、前年同月比で大幅な減少をみせている。

【7月の鉄鋼生産】

銑鉄生産は437.5万トンと前月比4.5%増、前年同月比33.5%減となり、前年同月比では5カ月連続の減少となった。

炉別生産では、転炉鋼が441.3万トンと前月比8.4%増、前年同月比32.6%減、電炉鋼が163.6万トンと前月比5.9%増、前年同月比11.2%減となり、前年同月比では転炉鋼は5カ月連続の減少、電炉鋼は17カ月連続の減少となった。

鋼種別生産では、普通鋼が487.7万トンと前月比6.0%増だが、前年同月比23.6%の大幅減。特殊鋼が117.2万トンと前月比15.5%の2桁増だが、前年同月比41.6%の大幅減となり、前年同月比では普通鋼は5カ月連続の減少、特殊鋼は20カ月連続の減少となった。

熱間圧延鋼材(普通鋼、特殊鋼の合計)の生産は535.8万トンと前月比6.1%増だが、前年同月比27.9%の大幅減となり、前年同月比では25カ月連続の減少となった。

普通鋼熱間圧延鋼材の生産は446.8万トンと前月比5.8%増だが、前年同月比22.7%の大幅減となり、前年同月比では5カ月連続の減少となった。

特殊鋼熱間圧延鋼材の生産は89.0万トンと前月比7.8%増だが、前年同月比46.2%の大幅減となり、前年同月比では19カ月連続の減少となった。

6月の主要品種の生産内訳をみると普通鋼では、鋼帯が251.4万トンと前月比12.6%の2桁増だが、前年同月比28.1%の大幅減。冷延広幅帯鋼が93.4万トンと前月比13.4%の2桁増だが、前年同月比36.7%の大幅減。鋼板が66.2万トンと前月比4.1%減で、前年同月比23.5%の大幅減。小形棒鋼が65.7万トンと前月比0.2%の微減だが、前年同月比0.2%の微増。H形鋼が29.2万トンと前月比0.9%、前年同月比0.8%のともに微増。冷延電気鋼帯が7.8万トンと前月比0.6%の微減で、前年同月比20.6%の大幅減。線材が9.5万トンと前月比5.1%増だが、前年同月比32.9%の大幅減となった。

特殊鋼では、熱間圧延鋼材が89.1万トンと前月比7.9%増だが、前年同月比46.1%の大幅減。冷延広幅鋼帯が93.4万トンと前月比13.4%の2桁増だが、前年同月比36.7%の大幅減。特殊鋼磨棒鋼・線類が12.5トンと前月比28.1%の大幅増だが、前年同月比34.0%の大幅減となった。

鋼管では、普通鋼熱間鋼管が25.4万トンと前月比2.8%減で、前年同月比28.2%の大幅減。特殊鋼熱間鋼管が7.2トンと前月比16.8%の2桁減で、前年同月比46.2%の大幅減となった。

めっき鋼材では、亜鉛めっき鋼板が52.8万トンと前月比10.0%の2桁増だが、前年同月比38.6%の大幅減となった。

【7月の鉄鋼出荷】

7月の主要品種の出荷を品目別にみると、普通鋼では鋼帯が132.8万トンと前月比19.1%の2桁増だが、前年同月比27.9%の大幅減。冷延広幅帯鋼が30.0万トンと前月比1.1%増だが、前年同月比46.5%の大幅減。鋼板が67.4万トンと前月比3.3%減で、前年同月比22.3%の大幅減。小形棒鋼が67.1万トンと前月比1.5%、前年同月比6.9%のともに減。H形鋼が29.9万トンと前月比9.8%増だが、前年同月比3.1%減。線材が9.4万トンと前月比6.2%増だが、前年同月比31.6%の大幅減となった。

特殊鋼では、熱間圧延鋼材が65.7万トンと前月比8.7%増だが、前年同月比44.2%の大幅減。冷延広幅帯鋼が13.3万トンと前月比4.2%減で、前年同月比42.2%の大幅減。特殊鋼磨棒鋼・線類が11.8万トンと前月比27.8%の大幅増だが、前年同月比33.8%の大幅減となった。

鋼管では、普通鋼熱間鋼管が23.8万トンと前月比0.1%の微増だが、前年同月比21.6%の2桁減。特殊鋼熱間鋼管が10.8万トンと前月比69.0%の大幅増だが、前年同月比12.3%の2桁減となった。

めっき鋼板では、亜鉛めっき鋼板が55.2万トンと前月比0.7%微減で、前年同月比37.1%の大幅減となった。

【7月の石油生産】

7月の石油製品の生産を油種別みると、重油が177.8万㎘と前月比2.5%増だが、前年同月比14.9%の2桁減。ガソリンが354.9万㎘と前月比11.9%の2桁増だが、前年同月比11.9%の2桁減。軽油が270.9万㎘と前月比1.0%増だが、前年同月比28.8%の大幅減。灯油が74.3万㎘と前月比2.4%減で、前年同月比15.6%の2桁減。ナフサが74.3万㎘と前月比2.4%減で、前年同月比51.0%と半減。世界的に減便による需要減のジェット燃料油が62.2万㎘と前月比14.2%の2桁増で持ち直したものの、前年同月比では依然59.9%と6割の減。液化石油ガスが27.2万トンと前月比32.8%の大幅増だが、前年同月比22.7%の大幅減。アスファルトが19.9万トンと前月比10.0%の2桁増だが、前年同月4.2%減。潤滑油が17.9㎘と前月比23.7%の大幅増だが、前年同月比11.2%の2桁減となった。

【7月の石油出荷】

7月の石油製品の出荷をみると、燃料油計で1,311.6万㎘と前月比9.0%増だが、前年同月比18.6%の2桁減となった。

油種別では、重油が192.9万㎘と前月比6.6%増だが、前年同月比8.5%減。ガソリンが402.5万㎘と前月比10.6%の2桁増だが、前年同月比7.3%減。軽油が292.0万㎘と前月比7.5%増だが、前年同月比22.8%の大幅減。ナフサが288.4万㎘と前月比7.9%増だが、前年同月比18.1%の2桁減。ジェット燃料油が60.7万㎘と前月比1.4%増だが、前年同月比63.3%と6割以上の減。液化石油ガスが32.1万トンと前月比24.7%の大幅増だが、前年同月比30.4%の大幅減。アスファルトが15.7万トンと前月比8.9%減だが、前年同月比7.2%増。潤滑油が28.2万㎘と前月比9.2%増だが、前年同月比9.1%減となった。

【7月のコークス・石灰石】

7月のコークスの生産は、227.6万トンと前月比0.2%の微減で、前年同月比18.2%の2桁減。出荷は68.3万トンと前月比2.2%増だが、前年同月比19.0%の2桁減となった。

7月の石灰石の生産は、1,084.1万トンと前月比4.9%増だが、前年同月比11.3%の2桁減。出荷は857.2万トンと前月比4.8%増だが、前年同月比13.4%の2桁減となった。

※添付資料

鉄鋼統計速報 令和2年7月 Excel

資源エネルギー統計速報7月 Excel

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令和2年9月16日(水)Vol.806

国内販売 10カ月連続前年比割れ

エネ庁 7月の石油統計速報発表

資源エネルギー庁は8月31日、7月の石油統計速報を発表した。それによると、前年比で7月の石油生産量は9カ月連続、販売量は10カ月連続前年比減となっている。

1.原油の動向

7月の原油輸入量は1,030万㎘、前年同月比68.1%と7カ月連続で前年を下回った。輸入量の多い順にみると次の通りとなっている。

(1)サウジアラビア(458万㎘、前年同月比91.3%)

(2)アラブ首長国連邦(350万㎘、同78.0%)

(3)カタール(79万㎘、同53.5%)

(4)クウェート(70万㎘、同65.2%)

(5)バーレーン(23万㎘、同75.2%)

7月の中東依存度は95.2%、前年同月に比べ8.3ポイント増と5カ月連続で前年を上回った。

2.燃料油の生産

燃料油の生産は1,014万㎘、前年同月比73.1%と9カ月連続で前年を下回った。油種別にみても、全油種(ガソリン、ナフサ、ジェット燃料油、灯油、軽油、A重油及びB・C重油)で前年同月を下回った。

3.燃料油の輸入、輸出

燃料油の輸入は307万㎘、前年同月比123.2%と3カ月連続で前年を上回った。輸出は136万㎘、前年同月比45.0%と5カ月連続で前年を下回った。

4.燃料油の国内販売

燃料油の国内販売は1,189万㎘、前年同月比91.6%と10カ月連続で前年を下回った。油種別にみると、灯油は前年同月を上回ったが、ガソリン、ナフサ、ジェット燃料油、軽油、A重油及びB・C重油は前年同月を下回った。

5.燃料油の在庫

燃料油の在庫は963万㎘、前年同月比100.1%と5カ月連続で前年を上回った。油種別にみると、ガソリン、ジェット燃料油、灯油、軽油及びA重油は前年同月を上回ったが、ナフサ及びB・C重油は前年同月を下回った

※添付資料

石油需給概要 2020年7月 Excel

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